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テックパーク × N高 中学生が本気でAIを学ぶとどうなる? 経済産業省「未来の教室」レポート

テックパーク × N高等学校(N中等部)
中学生が本気でAIを学ぶとどうなる?
経済産業省「未来の教室」レポート

2020年1月24日から31日まで角川ドワンゴ学園が運営する「N中等部」において、AIブロックを活用した機械学習カリキュラムを実施しました。このプロジェクトは経済産業省の「未来の教室」事業として実施しています。

テックパークでは、機械学習の教育コンテンツ制作・先生に向けたAI研修・当日の授業サポートを担当しました。なお、教育コンテンツについて、経済産業省のSTEAMライブラリにて公開予定です。このブログでは、生徒や先生の反応を交えて、どのような授業を実施したのか紹介します。

AIについて説明する中学生

どのような授業を実施したか

この「機械学習カリキュラム」はAIブロックを活用した実践から学ぶカリキュラムです。

テックパークでは小学生が主な対象のため、プログラミングや電子工作など「つくること」に時間をかけています。今回は中学生が受講するため、議論やアイデア発想・振り返りのワークを追加し、カリキュラムとして再編成しました。授業時間は50分×10時限の合計500分。内容は講義・ワークショップ・AIのトレーニング・プログラミング・プロトタイプ開発(自由制作)まで取り組む本格的なものです。

 

AIカリキュラムの全体像
AI教材スライド_サンプル

全10時限の授業構成

授業は以下の10時限で構成されています。
 1.   AIとは?
 2.   画像認識をやってみよう
 3−4. 人物判定ソフトをつくろう
 5.   AIフェアネス
 6−7. AIセルフレジをつくろう
 8−9. 自由制作
 10.  振り返り・まとめ

基本的な講義やツールの使い方を楽しみながら学び、「人物判定ソフト」と「AIセルフレジ」をそれぞれで完成させます。最後に自由制作に取り組み、作品発表とともに学びを振り返るカリキュラムです。

 

授業の特徴

AIブロックはGoogleが提供する機械学習ライブラリTensorflowを活用し、開発しています。そのため生徒が取り組むAIのトレーニング(学習モデルの構築)はビジネスで利用されているものと同様のものです。生徒は「AIをどのように活用するか」を社会人の実務レベルで試行錯誤できるのが最大の特徴です。

AIの便利さを学びつつも「AIフェアネス」の授業では、データの偏りによってAIによる差別や不当な結果が生まれることについても学びます。人の思い込みやバイアスがAIに間違ったデータを学習させてしまうリスクについて、議論しながら考えてもらう授業を設計しています。

AIの便利さも使う難しさも学んだ上で、8・9時限目は「自由制作」とし、それまでに学んだAIのしくみを使って、自分なりに作品をつくって発表してもらいました。テーマは「身近な困りごとの解決」でした。

 

AIとプログラミングについて講義する先生

授業を実施してみて

『中学生にAIを教える』というフレーズを聞くと、難しすぎるのではないか?と思われるかもしれません。わかりやすい説明や内容を心がけていますが、企画したスタッフやN中等部の先生も実施前は似たような不安を抱えていました。

しかし、カリキュラムがスタートするとその不安は良い方向に裏切られることになります。生徒たちは休み時間もAIのトレーニングに夢中になり、自分の好きなキャラクターを覚えさせたり、スマホに入っている写真を学習させたりしていました。先生によると、普段の休み時間はゲームをしている子も一緒に作業に没頭していたとのこと。

このカリキュラムでは、最初と最後の授業で「AIとは何か」の定義を考えることで、生徒の理解や考え方の変化を比較しました。漠然としていた「AI」の印象が生徒それぞれ自分の言葉として理解が進んでいる様子が印象的でした。さらに、世の中のAIサービスの「どの部分がAIで、どの部分が普通のプログラムなのか」についても感覚的に理解することができていました。

今回授業を担当した先生は専門教科が国語で、本人も「プログラミングが苦手」と言われていました。しかし、AI教育の研修を受けるなかで、「AIに学習させるのが面白い」「プログラミングの考え方が変わった」と感じていただき、実際の授業を担当してもらいました。 

 

AIについてまとめる中学生

参加した生徒の声

実際に授業に参加したN中等部の生徒の声をご紹介します。

「色々な角度から撮らないとAIは学習をしてくれなくてなかなか大変でしたがその分成功した時はとても嬉しかったです。AIを作る時に偏った考えだけを教えてはいけないことがこの学習を通して解りました」

「犬と猫を判別して鳴かせるシステムを作れたが、その他を作ろうとしたら、そもそもの精度が下がってしまった。きっとAIは耳で判別したのだと思う。今度改良してみたい」

「正直言って入学してすぐはプログラミングも苦手だったしAIについても何も考えてなかったけど、今回の授業で結構変わったと思う。スクラッチは自分でゲームができたときの達成感があって楽しいし、AIに関する知識もちょっとはついたと思う」

「スクラッチを使って、じゃんけんで後出しして絶対に勝つAIを作った。出す前にうーん...と考えてしまう面白いアイデアも出せた。プログラムしてみて、少しずつ自分がやりたいことをプログラムできるようになってきた。AIを使うと新しいことがたくさんできると思った。他の人のアイデアと自分のアイデアをを組み合わせると面白いアイデアができた」

 

成果発表する生徒

最後に

AIブロックは小学生から使えるAIという位置付けで開発し、テックパークや小学校での実践を重ねてきました。
今回、中学生向けのプロジェクト学習(PBL)として、より発展的なカリキュラムへに進化させることができました。なぜなら、中学生は小学生と比較し、数学的な感覚や抽象概念の把握が可能なため、、振り返りの際に言語化や応用がスムーズに進むからです。
 
このカリキュラム実施を機会に、専門学校や大学までAI教育の導入が進んでいます。

2020年現在でも様々な業界や職種でAIの導入され始めている中で、今の子供たちが大人になる頃は「AIを理解していて当たり前」という時代になるでしょう。

そんな未来に向けて、子どもたちがノリやハサミのようにAIもプログラミングも使いこなせるためにテックパークはAI教育を教育現場の皆さんと一緒にに広げていきます。

 


イベントのご案内

7/29(水)18時から オンライントークイベント「これからの“学び”の話をしよう ~第1回 中学生がAIを学ぶとは~」を開催します。この記事で紹介したN中等部でのAI教育実践例について、お話しします。ご興味ある方はぜひご参加ください。
 
イベント申し込みはこちら